AIやビッグデータを活用する
新しい地域情報学への試み

地域に関わるさまざまなデータを数値化することで地域の状態を可視化したり予測したりする地域情報学の試みについて

10
October 2020

オンライン動画プログラム「地域研究への招待」

AIやビッグデータを活用する新しい地域情報学への試み

 

    地域研究では,さまざまな資料やデータを世界中で収集しています.これらの資料やデータを使って研究を進める上で,デジタル化やデータ分析は不可欠です.地域情報学は,このような情報処理的作業を支援する情報ツールやデータ処理法の研究開発を目的として,開始されました.

     地域情報学の開始当初は,デジタル化の方法,メタデータの作り方,それらを貯めて利用するデータベースシステムの開発などが主な研究開発テーマでした(下記の文献[1],[2]).ここから生まれた情報ツールが,Myデータベースや資源共有化システムです.データベースの構築には,データベースシステムやサーバ装置やネットワーク機器などに関する知識や技術が必要です.Myデータベースは,このような専門知識を持たない研究者であっても,簡単な操作でデータベースを作れるように工夫した情報ツールです.東南アジア地域研究研究所では公開・非公開を含めて約100データベースがありますが,その殆どはMyデータベースで作られています(https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/collections/#db).資源共有化システムは,Web上の地域研究関連データベースをまとめて検索するツールです.国内外の地域研究に関わる約50のデータベースを一度に検索できます.日本語のキーワードであっても,タイ語のデータベースならタイ語で検索できる機能を持っています(http://app.cseas.kyoto-u.ac.jp/GlobalFinder-lg/cgi/Start.exe).

 

 

 

    通常のデータベースはキーワードを使って検索しますが,地域研究データの場合は,位置や時間の情報もデータ整理(地図や年表にするなど)や検索において重要です.そこでGIS(Geographic Information System: 地理情報システム)やTimelineなどを利用した可視化・分析ツールの研究開発も行っています.さらに,地名を緯度・経度(例えば,多賀城(貞観地震が発生した際の国府)の位置を緯度: 38.306667 経度:140.988333)に変換したり,和暦を西暦年(貞観11年5月26日(貞観地震の発生した日)をグレゴリオ暦の869年7月9日)に変換したりするツールの開発なども行っています(下記の文献[3],[4],[5]).

 

 

    1990年代以降のインターネットを含む情報技術(IT)の急速な進歩により,地域社会に関する情報の多くがWebやSNSなどを通じてリアルタイムで交換されるようになり,衛星やセンサからは時々刻々と大量の環境データなどが生み出されています.地震や津波などの大規模災害発生時や国政選挙などの際に,この傾向は顕著となります.地域研究においても,インターネット上のビッグデータは,研究に欠かすこことのできない対象となりつつあります.一方,コンピュータの演算能力の絶え間ない向上や人工知能などの新しい情報処理技術の登場により,これまでは困難とされてきた課題についても計算できるようになってきました.そこで,地域情報学の新たな課題として,インターネット上のビッグデータに自然言語処理や機械学習を応用して地域の状態を「見える化」できないか,さらにモデルとシミュレーションを組み合わせて地域の動向を予測(例えば,ある政策を実施した場合の効果など)できないかという研究に取り組んでいます.これが今回の動画の内容です.この目論見が成功するかどうかは定かではありませんが,たいへん魅力的な研究テーマと考えて取り組んでいます.

     

 

原 正一郎(京都大学東南アジア地域研究研究所)

 

再生時間:11:01

撮影地:日本、京都 京都大学

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THE CAST

「AIやビッグデータを活用する新しい地域情報学への試み」出演者紹介

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HARA Shoichiro

Professor

研究テーマ: データベース,情報検索,データマイニング

https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/organization/staff-2/hara/

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OHGAKI Hideaki

Professor

研究テーマ: 電子加速器,量子放射線,再生可能エネルギー

http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/quantum/ohgaki/

 

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MORI Shinsuke

Professor

研究テーマ: 計算言語学,自然言語処理

https://kyouindb.iimc.kyoto-u.ac.jp/j/xO7eM

 

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POZSGAI ALVAREZ, Joseph

Program-Specific Faculty

研究テーマ: 政治学,汚職

https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/organization/staff-2/pozsgai-alvarez-joseph/

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CRAVIOTO CABALLERO, Jordi

Program-Specific Faculty

研究テーマ: 持続可能エネルギー政策,産業共生

所属等の情報は、動画撮影時のものです。

もう少し深く知りたい方への文献紹介


地域情報学のイメージをまとめた初期の論文です.

(1) S. Hara: “Area informatics - Concept and status”, Lecture Notes in Computer Science book series (LNCS, volume 6259), pp.214 – 228, 2010, DOI: https://doi.org/10.1007/978-3-642-17184-0_17

(2) 柴山,原,貴志 編:特集 地域情報学の創出,アジア遊学,No.113,勉誠出版,2008.

AIやビッグデータを活用する

新しい地域情報学への試み


以下は,地域情報学に関係する研究テーマの多様性(地理情報(GIS),時間情報,データベース,機械学習など)を実感していただくために選びました.

(3) HGIS研究会編(川口,石﨑,後藤,関野,原 編):歴史GISの地平 景観・環境・地域構造の復元に向けて,勉誠出版,2012.
出版社のホームページ:https://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=100061

(4) 特集 第20回情報知識学フォーラム 「地域情報学における知識情報基盤の構築と活用」,2015. 出版社のホームページ:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jsik/25/4/_contents/-char/ja

(5) Tatsuki SEKINO Ed.: “Special Issue: Time and Space”, Inter Journal of Geoinformatics, Vol.15, No.2, April-June, 2019. https://journals.sfu.ca/ijg/index.php/journal/issue/view/201

 

 

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