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地域からみる情報とプロパガンダ:東アジアメディア史の視点から

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情報とプロパガンダの違いは、どこにあるのでしょう?21世紀に入って機械学習(AI)などのデジタルテクノロジーを駆使して、既存の制度や仕組みを再構築しようとする試み(DX化といわれています)が急速に進みつつあります。こうして多量の情報が瞬時に私たちのもとに飛び込んでくるわけですが、それらの情報は、真実のものもあれば、フェイクなものもあることは、すでによく知られています。また、こうした情報のなかには、他人をだまして金銭的搾取をおこなうやり方が日常茶飯事に潜んでいますし、ときとしてプロパガンダ(政治宣伝)として機能している情報もあることさえ、私たちは日常的に公表されているニュースを通じてでも知ることができています。

日本を含む「東アジア」という地域では(時代によってその形は容易に変容しますが)、過去の歴史的禍根や、現在の経済的利害関係、政治集団の思惑などが原因となって、率直な交流と理解が損なわれることがたびたびあります。そのたびにお互いの共通理解を促す試みが進められますが、理解促進のための根源的な情報が共有されることは容易には進んでいません。歴史認識を共通化しようとする善良な研究者の試みも、いまのところけっして成功しているとはいえない段階です。

私たちにいま必要なことは、時代に有益な情報だけを蓄積することではなく、将来に有益になるかもしれない情報を大切にすることなのです。そうした意味から、まっさきに警戒すべきはプロパガンダそのものです。私たちは、どうすればプロパガンダを見抜くことができるようになるのでしょうか。こうした不可欠の生きるための知恵は、歴史の中にも盛り込まれています。未来を生きる知恵を習得していくために、過去二千年以上も蓄積されてきた歴史的文脈から、有用な知恵を学ぼうではありませんか。

貴志俊彦(京都大学東南アジア地域研究研究所)

所属等の情報は、動画撮影時のものです。

もう少し深く知りたい方への文献紹介

  1. 貴志俊彦『帝国日本のプロパガンダ―「戦争熱」を煽った宣伝と報道』(中公新書2703)(中央公論新社、2022年)
    *日清戦争から約50年間におよぶ帝国日本の時代において、プロパガンダがどのように変容しつつ社会に浸透していったのでしょうか。本書では、とくにビジュアルな報道に限定して明らかにしようと試みています。

  2. バラク・クシュナー『思想戦 大日本帝国のプロパガンダ』井形彬訳(明石書店、2016年)。原著は、Barak Kushner, The Thought War: Japanese Imperial Propaganda, Honolulu: University of Hawaii Press, 2006.
    *戦時下日本で進められたプロパガンダ戦略は、政府、軍部だけでなく、民間の業界、一般大衆まで、いわば官・民・軍一体となって行われたこと、それが戦後復興にまで影響を及ぼす継続性を持っていたことなどを明らかにした啓発的な書籍です。著者は、イギリスのケンブリッジ大学で歴史学を研究している著名な研究者です。

  3. 貴志俊彦・川島真・孫安石編著『増補改訂 戦争・ラジオ・記憶』(勉誠出版、2015年)
    *プロパガンダの一翼を担ったラジオ放送は、アジア各地で戦時下のニュースをどのように伝え、リスナーに記憶させたのでしょうか。ラジオ放送が登場する1920年代から、冷戦期に至るまで繰り広げられた電波戦争が、20世紀という時代に与えた影響について解明を試みた、一般読者向けを意識した国際的な共同研究の成果です。
  1. 貴志俊彦『満洲国のビジュアル・メディア――ポスター・絵はがき・切手』(吉川弘文館、2010年6月、総248頁)
    *これまで看過されがちであった満洲国(1932-1945)の情報戦略、宣伝宣撫政策の全貌を解明しようとした野心的な作品です。検討の素材としては、歴史資料として評価されてこなかったポスター、絵葉書、切手、グラビア誌などのビジュアル・メディアであったことも特徴のひとつです。本書は韓国でも翻訳出版されました。

  2. 貴志俊彦・土屋由香編著『文化冷戦の時代―アメリカとアジア』(国際書院、2009年)
    *現在の日米関係を考えるうえで、アジア太平洋戦争終結後、すなわち連合国による占領期において米国、イギリス連邦軍が、日本、韓国、台湾、フィリピン、ラオスなどアジア諸国でおこなった文化政策は、もっと研究されてよい分野です。こうした研究の手引き書になることを意識して編集しました。本書は評判を呼んで台湾、韓国で翻訳出版されました。

  3. 山本武利 『ブラック・プロパガンダ―謀略のラジオ』岩波書店、2002年
    *本書を読んだときは本当に衝撃を受けました。1944年6月サイパン陥落後、米軍がその翌年4月から日本全土に向けておこなった謀略放送を内容にしていたからです。しかも、米国で公開されたばかりの一次資料を駆使し、新たな歴史学の方法論を提示していたことには啓発されました。