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人類学から学ぶ: 福岡から考える日本の介護現場のジレンマ

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現在、日本をはじめ多くの先進国では急速に高齢化が進んでいます。日本は2007年に「超高齢化社会」に突入し、2055年までにおおよそ41%の日本人が高齢者(65歳以上)となります。そして、近い未来の日本社会において、未婚率の上昇、晩婚化、晩産化、少子化などが未曾有の社会変革をもたらす結果、人口に占める「支えを必要とする人」(従属人口)の割合が毎年増えると予測されます。その結果、介護人材は毎年約5.3万人程度増員する必要があると推定されています。

令和4年10月末時点で、外国人労働者数は約182万人と過去最高を記録しました。医療・福祉分野では、前年度より大幅に増加し、約7.5万人が従事しています。人手不足が深刻化する日本の高齢者介護の現場の需要に応え、海外からの「医療従事者」が急増しています。2000年代後半に合意した日本とインドネシア・フィリピン・ベトナムの政府間の経済連携協定(EPA)の枠組みにより、介護福祉士候補者「EPA人材」の受け入れが始まりました。その後、2010年代半ばには、技能実習生、特定技能や専門学校の留学等、介護福祉士の資格取得を目指す介護留学生と定住者など、多様な在留資格の方々が介護現場で就業し始めました。

このように、介護現場の要請に応じて、ミャンマー、ベトナム、ネパールから医療従事者が来日し、働いています。最近、様々な介護施設を訪問すると、あたかもアジアの一部が突然に現れてきたような感覚を覚えます。つまり、現在の介護現場は、日本の高齢化を観察する場というだけでなく、期せずして外国籍の方々と関わる草の根的な「交流の場」ともなっています。外国籍の医療従事者の方々はどのような動機で来日し、どのような日常や仕事を経験しているか、また彼らの思い描いていた理想と現実のギャップなどを尋ね、調査を実施しています。

国際社会において日本は様々な取り組みで国際的プレゼンスを向上させようとしています。一方、少子高齢化が進む日本は、介護人材の人手不足問題に直面し、ジレンマを抱えるようになってきました。こうした日本の人口動態の変化がアジアとの新しい接点を生み出し、既に日本に在住されている外国籍の方や、来日間もない方を看護師・介護士として受け入れる動きが早まっています。我々の地域社会に目をむけると、以前にも増して多くの外国人が定着し、エッセンシャルワーカーとして活躍していることは紛れもない事実です。あえて言えば、「介護移民」を受け入れる時代が始まったのではないでしょうか。

多様化する日本社会に定住する外国人に対する理解は、やがて地域で共生社会を形成し、隣国との架け橋を築いていく呼び水となることでしょう。地域の変容を観察することは、「日本」という島国の枠を取り払い、アジアにおける新しい未来を想像する機会を与えてくれるのではないでしょうか。

マリオ・ロペズ(京都大学東南アジア地域研究研究所)

所属等の情報は、動画撮影時のものです。

もう少し深く知りたい方への文献紹介

  1. 大野俊・マリオ・ロペズ2021.「多様化が進んだ「介護移民」― パンデミック下での業務と意識に焦点をあてて」 Asia Pacific Research Center. 33-40. (in English, Diversifying “Care Migrants” :A focus on their work and attitudes during the pandemic)

  2. Mario Lopez, Ohno Shun. 2021. The Case of Japan: How Covid-19 impacted the procurement and lives of migrant healthcare workers. International Journal of Social Quality. 11(1-2): 262-288.
  1. Mario Lopez. 2022. Viral Disruption and Labor Rearrangement: Covid-19 and its Impact on the Procurement of Migrant Healthcare Workers for Japan. Focus.  2022:(109).