• HOME
  • ABOUT
  • 5-MIN
  • ARCHIVES
  • Menu
  • HOME
  • ABOUT
  • 5-MIN
  • ARCHIVES
  • Menu

フィールドワークの第一歩は、天気図の作成

私がフィールドワークに興味をもったきっかけは、まち歩きや山歩きでした。 自分の足で歩きながら、まちの様子を見たり聞いたり、人と話をしたり・・。山登りでは、地図を持ちながら地形をみたり植物を観察したり、観天望気をしながら行動します。そのような作業は、身体全体で感じて考えるので、何年経っても記憶に残っています。

学生時代、土木工学科の気象学研究室では雨や雪、それらに関する自然災害について学びました。ある雲の発達過程には、雨が生成する前、たくさんの雪(氷の結晶)が様々な形やサイズで雲内に含まれています。雪の降らない地域で育った私としては雪の話が新鮮でした。現在研究しているインドネシアの泥炭地火災も雨が深く関係しています。しかし、この問題を解決するには雨の知識だけでは難しく、土地が放棄されずにきちんと管理されるための社会の仕組みや経済なども考えなければなりません。

私が最初にインドネシアに興味をもったのは、インドネシア人の友人と一緒に過ごした大学院生時代でした。インドネシアは地震や火山噴火、洪水など、日本と同じように災害が多い国であることを知りました。洪水で家屋が浸水したニュースを毎年のように耳にしますが、水が腰近くまで浸りながら歩いて移動(避難)したりバイクを押している姿には毎回驚かされます。一方で、人と人とのつながりが強く、互いに助け合いながらも、多様な宗教や文化、言語が存在する中でそれぞれが生活している姿にとても惹かれました。

日本とインドネシアでは災害に対する考え方・捉え方も異なると思います。私は防災気象情報を市民に一方的に提供するのではなく、彼らの暮らしの中でどのように気象情報を捉えるのか、役立てられそうか、一緒に考えてゆきたいと思っております。

本動画は、土木工学など理系の分野から地域研究の世界に入ることになった例として、ご覧いただければ幸いです。

小川まり子(京都大学東南アジア地域研究研究所)

所属等の情報は、動画撮影時のものです。

もう少し深く知りたい方への文献紹介

(1) “雪は天から送られた手紙である”で有名な中谷先生の本。中谷先生は、雪の結晶の形や模様がどのような条件でできるかがわかれば大気の構造を知ることができると考えました。
中谷宇吉郎『雪』岩波書店(岩波新書)、1938年。
https://www.iwanami.co.jp/book/b267034.html

(2) 降水粒子や雲の成長・分類などが、イラストや具体例を用いてわかりやすく説明されています。雲を観察することの楽しさを教えてくれます。風については地下鉄の出入り口で吹く身近な風から地球規模の風系まで触れられています。
中村和郎『雲と風を読む』岩波書店、2007年。
https://www.iwanami.co.jp/book/b259481.html

(3) 「地理好き」のための月刊誌。雨に関する記事では令和2年7月九州豪雨のことが、気象レーダー画像、河川流域における雨の図を用いてわかりやすく解説されています。
平井史生「地図でみる「球磨川豪雨」と「飛騨川豪雨」―令和2年7月豪雨」『地理』2021年1月号、6-15頁、古今書院、2021年。
http://www.kokon.co.jp/monthly/

(4) 防災テキスト。日本および海外の災害について、災害時の対応と復興に向けた社会づくり、まちづくりの仕組み、現地での支援活動の様子について各分野の専門家や実務者、ボランティアから紹介されています。
北後明彦・大石哲・小川まり子編『地域づくりの基礎知識4―災害から一人ひとりを守る』神戸大学出版会、2019年。
https://kobe-yomitai.jp/book/758/

(5) 動画に出てくる都賀川が流れる六甲山系・南斜面では昔から土砂災害が多発していました。昭和13年7月阪神大水害の写真を下記ウェブサイトの「当時の様子を見る」から見ることができます。
六甲砂防事務所「昭和13年 阪神大水害」(2021年3月16日アクセス)。
https://www.kkr.mlit.go.jp/rokko/disaster/history/s13/s13-index.php

本ページの内容は、京都大学東南アジア地域研究研究所ニューズレター記事としても収録されています。該当記事はこちらです。