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微生物はどこからやってきて、どこへ行くのか?:グローバル化が加速させる感染症の世界流行

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グローバル化の進展に伴い、ヒトと動物の感染症の世界流行が加速しています。時に病原体としてヒトと動物に危害を加える微生物はどこからやってきて、どこへ行くのでしょうか? 環境中の微生物の動態はほとんどが不明です。国内外(特に東南アジア)の研究者と流行制御のための共同研究をしています。

地球上には870万種以上もの生物種が存在しており、そのうち、少なくとも1400種がヒトに対して何らかの感染症を引きおこす微生物(病原体)とみなされています。これらの病原体によって、有史以来、世界流行(パンデミック)は何度も引き起こされています。世界流行はヒトの越境活動によってもたらされ、人流と物流の増加に比例して広がります。代表的な例として、(1) 14世紀に欧州を中心に大流行したペスト(モンゴル軍のユーラシア大陸横断が遠因との説が有力)、(2) 19世紀から現在も続くコレラの世界流行があげられます。ガンジス川流域の風土病に過ぎなかったコレラは英国によるインド植民地化をきっかけとして、帝国主義・植民地主義の時流に沿って世界に拡散しました。すなわち、昔も今も世界流行を引き起こしてきたのは私たちヒトのグローバル活動です。

近年の著しいグローバル化の加速に伴い、ヒトと動物の感染症の世界流行が加速しています。感染症を引き起こす病原体にはウイルスや細菌、原虫などさまざまなものがあります。通常、動物には全く無害な微生物がヒトに対しては病原性を示したり、逆にヒトの病原体が動物には全く無害であることが多いのですが、大津波や大地震のように極めて低い頻度で動物種の壁を越えることがあります。その時、人には無害だった「微生物」が有害な「病原体」になります。開発や環境破壊によるヒトと動物の接触頻度の増加がその遠因ですが、動物種を越える伝播がどのように起きるのかは不明な点がとても多いです。 ヒト、動物のいずれの病原体であっても、流行制御のためには、環境中(水や食品も含む)における動態解明は重要なので、高感度かつ迅速な検査法を開発し、その解明を図っています。さらに、汎用性を高めるために、簡易で安価な検査法の開発に努めています。世界は完全につながっているので、国際協力が重要です。国内外(特に東南アジア)の研究者と流行制御のための共同研究(開発や性能評価)に取り組んでいます。

山崎 渉(京都大学東南アジア地域研究研究所)

所属等の情報は、動画撮影時のものです。

もう少し深く知りたい方への文献紹介

  1. Yamazaki W et.al. Development of a point-of-care test to detect SARS-CoV-2 from saliva which combines a simple RNA extraction method with colorimetric reverse transcription loop-mediated isothermal amplification detection. Journal of Clinical Virology 136 104760 (2021).
    新型コロナウイルスの簡易迅速診断法を開発しました。https://doi.org/10.1016/j.jcv.2021.104760

  2. Chua APB et.al. Development of a loop-mediated isothermal amplification (LAMP) assay targeting the citrate synthase gene for detection of Ehrlichia canis in dogs. Veterinary Sciences 7(4) 156-156 (2020).
    フィリピンの研究者と共同して、東南アジアで流行している犬の感染症の簡易迅速診断法を開発しました。https://doi.org/10.3390/vetsci7040156

  3. Yamazaki W et.al. New micro-amount of virion enrichment technique (MiVET) to detect influenza A virus in the duck faeces. Transboundary and Emerging Diseases 66(1) 341-348 (2019).
    環境水中や動物の糞便に含まれるウイルスを簡易高感度に濃縮検出する方法を開発しました。https://doi.org/10.1111/tbed.13027
  1. Yamazaki W et.al. Campylobacter and Salmonella are prevalent in broiler farms in Kyushu, Japan: Results of a 2-year distribution and circulation dynamics audit. J. Appl. Microbiol. 120(4) 1711-1722 (2016).
    国内の養鶏場で蔓延しており、ヒトに感染するリスクを有する食中毒菌の環境動態を調査しました。
    https://doi.org/10.1111/jam.13141

  2. Yamazaki W et.al. Development and evaluation of multiplex RT-LAMP assays for rapid and sensitive detection of foot-and-mouth disease virus. Journal of Virological Methods 192(1-2) 18-24 (2013).
    イギリスの研究者と共同して、世界流行を起こしている口蹄疫の簡易迅速診断法を開発し、性能評価しました。https://doi.org/10.1016/j.jviromet.2013.03.018

Author

  • 山崎 渉

    教授
    専門分野:
    食品衛生学、人獣共通感染症学、動物感染症学
    Professor
    Fields:
    Food hygiene, Zoonotic diseases, Animal Infectious Diseases

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