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災害を通してみる地域の姿:被災地アチェのこれまでとこれから

私は大学院生の時、インドネシアの歴史を研究するためにインドネシアのアチェ州にあるシアクアラ大学に留学しました。アチェは1970年代からインドネシアからの分離独立運動が続いており、私のアチェ滞在中も内戦状態にありました。幸いにも私が住んでいる地域では激しい戦闘はなく、私は大学で先生や友人たちに助けられながら調査を進めるとともに、ホームステイ先の家庭を通してアチェ人にたくさんの知り合いができ、言葉や文化や社会についての理解を深めることができました。

帰国後の2004年12月26日にスマトラ島沖で巨大な地震と津波が発生し、インド洋沿岸の国々に大きな被害をもたらしました。震源に最も近かったアチェ州では17万人以上が犠牲となり、生き残った人たちも家族や友人を失いました。

研究対象地域の人々が危機に直面したときに研究者はどのように対応するのか。いろいろな考え方がありますが、私は人々が危機を乗り越えようとする過程をともに経験しながらそれを記録し、その意味を考えることにしました。アチェでは津波を契機に30年続いた内戦が終わり、災害と内戦からの二重の復興に取り組むことになりました。

アチェの人々は、未曽有の災いによってもたらされた困難や喪失感を抱えながら、あきらめたり打ちひしがれたりすることなく、自分たちの経験が次の世代や他の地域の人々がより安全な社会に暮らすための助けとなることを願って復興に取り組んでいます。

日本を含む世界の人々にアチェの経験を伝えることは、災害による被害が少ない世界をつくることに役立つと信じています。

西 芳実(京都大学東南アジア地域研究研究所)

所属等の情報は、動画撮影時のものです。

もう少し深く知りたい方への文献紹介

(1) インドネシア・アチェ州の津波被災と復興については次の動画や記事や本も参照してください。
「すぐにわかる防災の国際協力」
https://youtu.be/UhUN3FO3KrI
「復興を生かす力:インドネシアの津波被災地に学ぶ」https://www.10plus1.jp/monthly/2018/03/issue-03.php
『被災地に寄り添う社会調査』(京都大学学術出版会)https://www.kyoto-up.or.jp/book.php?id=2117

(2) アチェ州の津波と内戦からの復興についてさらに詳しく知りたい人は、『災害復興で内戦を乗り越える: スマトラ島沖地震・津波とアチェ紛争』(京都大学学術出版会)を読んでみてください。https://www.kyoto-up.or.jp/books/9784876984923.html

(3) 災害対応と社会については、インドネシア以外を含めて、「災害対応の地域研究」シリーズ(京都大学学術出版会、全5巻)があります。https://www.kyoto-up.or.jp/series.php?id=141

(4) 人文社会学から災害復興を考える取り組みについては、『日本災害復興学会論文集』第15号があります。
https://f-gakkai.net/research/864/

(5) 地域研究者が調査地の災害にどのように関わるかについては、「研究者だからこそできる情報発信をめざして」をご覧ください。http://www.cwr.kyoto-u.ac.jp/rensai/kenkyusya/2011/11/34nishi.html

(6) 2004年スマトラ沖地震・津波の被災と復興については次の資料があります。
『2004年スマトラ沖地震・津波復興史I』
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/files/pdf/publish/ciasdp54.pdf
『2004年スマトラ沖地震・津波復興史II』
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/files/pdf/publish/ciasdp55.pdf

本ページの内容は、京都大学東南アジア地域研究研究所ニューズレター記事としても収録されています。該当記事はこちらです。